棚

希少貝シロコムラスを送れ!

マイコの占いに、一同は落胆。

期待してしまった方が悪かったのかもしれません。
だって、もっとピンポイントで場所を言ってくれると思っていたのですから。
それが、

「山の家か海の家にある」

と、1ヵ所ではなく、2ヵ所も候補を上げてきました。

それまで夜通し探していた町の人々は、
くちぐちに呆れた、もう疲れたなどと言って家に戻ってしまいました。

それでもその場には、10人ほど残っていました。

海の家・離れ小島の小島書店

でも、わたしも含めて、まだ残った人たちは、
どちらかの家にあるのだろうと少し楽観的な考えを持っていました。

どちらかにちゃんとモノがあれば、二分の一の確率であるのだからと。
ふた手に分かれて、二つの家に行くことになりました。

山の家と言われて、
フェレルの町ではひとつしか思いつきません。

ハレギ特魔書店です。
まだわたしはそこに行ったことがないのでわかりませんが、
フェレルでも一番山奥にあって、その場所だけ木々が開かれているそうだす。

そう聞くと、一度見てみたいと思いました。
んー、行く機会を作ってみようと思います。

そして、わたしは海の家に行く組になりました。
海の家と言われれば、離れ小島の小島書店のことだろうということになりました。
しかし、今はだれも住んでおらず、家の中に入れるのかという問題が出てきました。

そこで、中央書店の店長に話をしてみると、
なんと小島書店の鍵を預かっているというのです。
小島書店の本はすべて運び出しているそうですが、
時折り、窓を開けて空気の入れ替えをしているそうです。

でも、空っぽになった家の中で、伝説級の貝と思われるものはなかったというのです。
家を出て行く際、片付けているのですから。

それでも小舟に乗って海を渡り、
元小島書店の家の中へ入りました。

湿った空気と埃のにおいが立ち込めていました。
言われた通り、中はがらんとしていて小物ひとつありませんでした。

大人が歩くと、いたるところで床がきしみました。
そして、わたしは広くなったリビングから海に面した正面の窓に近づいた時です。

わたしの足元の床が抜けて、下へ落ちてしまいました。
リビングの下には、地下室があったのです。

地下室で見つけた伝説の貝

強くお尻を打った程度で、他に怪我はありませんでした。

そこには、本ではなく、貝や魚の骨、島に流れ着いたのだろう錆びた何か。そして、海のスケッチの類、走り書きのメモが壁や棚に並べられてありました。

その中にひときわ白く、波打った模様の貝殻が一つだけありました。
さわり心地は、シルクを触っているようで、
貝殻とは思えないほど肌触りがよいものでした。

貝殻の下に敷いてあった紙には、しっかりとシロコムラスと書かれていました。
地下室に歓喜の声が上がりました。

お尻を打ったことなんて忘れてしまいました。

しかし、一体誰がこれを見つけたのでしょうか。
それは誰にもわかりませんでした。

中央書店の店長は、小島書店の家に地下室があったことを知りませんでした。
おそらく小島書店の店主も知らなかったのだろうと言います。
本は集めても、貝などを収集すると聞いたことはなかったそうです。

そして、この地下室には家の中から入ることはできませんでした。
地下の岩をくり抜いた通路を歩いていくと、海の岸壁に出ました。

家からは少し離れたところで、
普通の住人こんな壁づたいのところを歩いて
地下室を見つけるとは思えません。

まして、こんなところに入口を作ろうとも思いません。
使い勝手が悪すぎます。

伝説の貝・シロコムラスを送れ!

地下室のことはさておき、やっとシロコムラスを見つけたのです。
越境救急隊の二人は、すぐにでもこれを持っていかなければなりません。

しかし、救急隊のブリックとナインは暗い表情をしていました。
今からどんなに急いで戻っても、薬の効く時間を過ぎしてまうと。

それでもシロコムラスを持っていってみないと、
結果はわかりません。

そこで、

「誰かが逓送魔法でも使える人がいればな」

と、声があがったのです。

それを聞いて、わたしの心拍数は急上昇しました。

当然、今、患者のもとで待機している隊員のもとへ送ることができれば、
効き目の時間内なのです。

すぐに中央書店の店長と目が合いました。
なぜなら、わたしが逓送(ていそう)魔法を使えると知っていたからです。

しかし、店長は何も言ってはきませんでした。
気をつかってくれたのです。
わたしが物を送る仕事ことから逃げてきたのを知っていたから。

ありがたく思えた反面、ブリックとナインのうつむいた顔を見ていると、
自分が情けなくなりました。

人が困っているのに、何もしない。

できることが自分にはあるのに……。

もし、送ることになったとして、失敗したらどうしようか不安になりました。
シロコムラスの貝殻は、それひとつしかないのです。
どうやって手に入れたのかもわからないとても貴重なものなのです。

それを逓送に失敗してしまったらと思うと怖くなったのです。

でも、わたしは自ら逓送魔法が使えることを伝えました。

失敗もしていないのに、
始める前から不安になる必要はないと思いました。

よく考えてみれば、手でにぎり隠せるほどのものを
逓送で失敗したことはありませんでした。
複数のものを同時に送るわけでもありません。

失敗したら、失敗したんだなと思うようになっていたのです。
なべを焦がしたときのことをふと思い出しました。
一度もやったことがないことをするわけではないのだと。

実際、やってみたら逓送できたのです。
方角と大まかな地図、そして位置情報。
なにより、越境救急隊の箒には、正確な位置情報を割り出すため、
小さな水晶玉が埋め込んであるというのです。

そこまで道具が整っていれば、問題はありません。
国をひとつふたつまたぐことぐらい朝飯前です。

 

翌日には、
わたしが逓送したシロコムラスは、しっかり届いてたことと、
患者の容態も良くなっているという知らせが届きました。

さらにその次の日には、越境隊のお偉い人がフェレルを訪れ、
町へ感謝状が送られてきました。

町の人々と夜通し探したかいはあったなと思います。

そしてもうひとつ、

わたしは、越境隊員から、
越境隊に入って、逓送の仕事をしないかと言われたのです。

わたしがどうするかは、また次の便りに書きたいと思います。

それではまた。

だいぶ焦げたにおいがなくなった小屋のあるフロイハイルより。