海へとのびる桟橋

釣れない釣り竿で釣りをするおじいさんと海竜伝説

信念の意味

なんとなくその意味がわかったのは、
小屋を借りることになって、お礼を言いにイギルさんの家に行った時のことです。

イギルさんはひとり暮らしでしたが、
部屋の片隅に、女性物の服が丁寧に飾られていました。

ルイーゼさんという奥さんがいたそうです。
あの海竜に沈められたパーセラ号に、イギルさんの奥さんは乗船していたそうです。

イギルさんが海竜を吊り上げたい理由は、復讐だとすぐさま思ったのですが……。

ルイーゼさんの服が飾られた隣に小さな洋服ダンスがありました。
その上に、錆びた指輪髪留めが置いてあったのです。

釣り上げたかったものって、本当は……。

信念を持ち続けること。

それは、とても大変なこと。

仕事を辞めたわたしには、その仕事に対する信念がなかったのか。

イギルさんは、

「信念は、自分の心から湧き立って生まれてこなければ、持ち続けられない。少し気持ちが落ち着いたら、見えてくるかもしれん」

と言っていました。

わたしには、まだはっきりと見えているわけではないのですが、
きっとこの便りを書き始めたのも、
沸き立つ思いがあったと思うのです。

フロイハイルは、とても広いので、伝えたいことはたくさんあります。
この便りも長くつづき、あなたが興味を持ってくれているこのフロイハイルの世界を伝えたいと思います。

相変わらず、イギルさんの釣れない釣りは続いています。

わたしもイギルさんに負けないようにしないと。

それではまた。

大きなすき間二箇所にひとまず板を張った小屋があるフロイハイルより。